最高裁判所第二小法廷 昭和62年(あ)508号 判決 1988年7月08日
主文
本件上告を棄却する。
当審における未決勾留日数中三七〇日を本刑に算入する。
理由
弁護人古屋倍雄の上告趣意第一点は、憲法三一条、三七条三項違反をいうので検討すると、原審裁判所は、私選弁護人二名の在廷する昭和六二年二月二六日の公判期日において弁論を終結したうえ、判決宣告期日を同年三月五日と指定し、被告人に通知したこと、被告人は、判決宣告期日の前々日に右弁護人二名をいずれも解任し、その翌日貧困を理由として国選弁護人選任の請求をしたが、原審裁判所は、国選弁護人を選任しないまま予定どおり右判決宣告期日に判決の宣告をしたこと、被告人に右の時期に弁護人全員を解任するのもやむを得ないとする事情がなかったこと、原審裁判所が右判決宣告期日に間に合うように国選弁護人を選任するのは困難であったことが認められる。右の事実関係のもとにおいては、国選弁護人を選任しないまま判決の宣告をした原審裁判所の措置が憲法三一条、三七条三項に違反するものでないことは、当裁判所の判例(昭和二五年(あ)第二一五三号同二八年四月一日大法廷判決・刑集七巻四号七一三頁)の趣旨に徴して明らかであるから、所論は理由がない。
同第二点は、事実誤認、量刑不当の主張であって、適法な上告理由に当たらない。
被告人本人の上告趣意は、事実誤認、量刑不当の主張であって、適法な上告理由に当たらない。
よって、刑訴法四〇八条、一八一条一項但書、刑法二一条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官藤島昭 裁判官牧圭次 裁判官島谷六郎 裁判官香川保一裁判官奥野久之)